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『逃げちゃダメだ』

ウインドサーファー尾川潤の第3回目のコラム

『逃げちゃダメだ』
 
 3回目のコラムになりますが、今回、僕がウインドサーフィンのレースをする上で学んだことで、皆さんにお伝えしたいことは、「負けるための言い訳をしないこと」です。
 突然ですが、皆さんは何か勝負事をする時に必ずやっているルーティーンや信じているジンクスのようなものはありますか?
 結論から言うと、僕はなるべく行動をルーティーン化したり物事のジンクスをつくったりしないようにすることで、結果を残してきました。
 人は皆、これをしたら上手くいくとか、こうなればきっといいことが起きるとか、自分に都合の良いように物事を捉えがちなんです。いつも決めているルーティーンの行動も、これをすれば勝負に勝てると自分に言い聞かせているだけだし、お気に入りの服を着れば勝てるといったジンクスも勝手に自分のために作り上げた「何の根拠もない」思い込みなんです。日々の練習での様子を思い出して、同じ行動をすれば本番でも緊張を和らげたり精神を落ち着かせたりすることで本来の実力を発揮できるといった点で、ルーティーンを取り入れることがあると思うんです。でも、本番で同じようにできない環境になってしまったらどうでしょうか。このルーティーンは何の効力も発揮しないまま、むしろ自信を失ってしまうことになるかもしれません。
 結局、ルーティーンもジンクスも「勝つための理由づけ」ではなく「負けるための言い訳」なんです。勝負事で、勝っても負けてもこれをしたからだ、と理由をつけて自分を納得させるだけで、練習してきたことや成果が一番大切なはずなのに、全く関係のないルーティーンといった行動やジンクスといった思考にフォーカスを当ててしまって、本質である勝ち負けの原因究明にはならないんです。だから、これらの行動や考え方は、僕からしたらすべて現実から背を向けた「逃げ」なんです。
 「逃げちゃダメ」なんです。
 雨が降っていることに背を向けちゃダメなんです。「雨女、雨男」「晴れ女、晴れ男」も誰かのせいにして、何かのせいにして、自分は悪くない、だから今日は上手くいかないんだ、と言い聞かせているだけなんです。
 物事に勝ったときには、しっかりそのときの状況を把握してどうして勝てたのかを振り返り、負けたときにはその原因を探求して苦手分野の克服を徹底して練習するように計画を立て直すことが大切なんです。僕はそうしてきました。行動をルーティーン化せずに、その場その時に合わせて柔軟に対応できるようにしてきたことで、こんなときはどうしたらよいか判断できるようになったし、変なジンクスを捨てることでそればかりに意識を集中してしまうというストレスも無くなりました。
 皆さんも何か物事を成功に導きたいのであれば、言い訳ばかり考えないで、物事の本質にしっかり向き合うことが大切です。根拠のないものは信じない。信じるものは目の前にある課題と現実であると自覚することが大切です。

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